たくさんの商品やサービスを一度に比べられる比較サイト[*1]はとても便利ですが、がん保険を選ぶときは並べられた数字や言葉だけで決めるのは難しいものです。そこで、この記事ではファイナンシャル・プランナー(以下、FP)である黒田尚子 (くろだ なおこ)さんにがん保険を検討する時に本当に大切にすべきポイントを教えていただきます。黒田さんは、2009年に乳がんと診断され、2010年に手術。その後、乳がん体験者コーディネーター資格を取得し、がんに関する執筆やセミナー講師として活躍しています。

保険比較サイトの見方や、がん保険を検討する時に備えておきたい知識についてお話を伺いました。

[*1]主に複数の保険会社の商品を取り扱っている販売代理店が運営する、商品の比較や売れ筋をランキング形式で紹介しているサイトのこと

POINT 1 比較サイトは、がん治療の実態を把握してから活用しましょう

保険比較サイトで商品を選ぼうとしたのですが、難しくてあきらめてしまいました。サイトの比較のポイントなどがあれば教えてください。

保険比較サイトを見ると選べなくなるというのは、まさにそのとおりなんです。最近のがん保険は多種多様で、各社が考えるがん保険のかたちがあり、診断給付金が高額なもの、入院保障や通院保障など治療保障が手厚いものなどさまざまなタイプがあります。単純に比較サイトだけを見て選ぶのは難しいと思います。

サイトによって比較軸が違うので、面倒くさくなって最後には保険料を見てしまうのだと思います。見始めるとキリがない。私も比較サイトを見てみましたが、わかりませんでした。

口コミや宣伝文句を見ると、さらに迷ってしまいます。

「売れています」「人気があります」「最新の商品です」というキャッチフレーズだけで判断してはいけないと思います。保険比較サイトでは商品の特徴は把握できますけど、自分に合っているかはわかりません。

まず、初めての方はがん治療のイメージがわかないですよね? そういうときには、今のがん治療の実態や何にお金がかかるのかなど、科学的根拠(エビデンス)や客観的なデータなど専門知識を持っている人に、きちんと情報提供していただくと良いと思います。例えばそれが私たちFPなのですが(笑)。

もし、比較サイトを活用するとしたら、ある程度の予備知識をつけて、自分自身で選ぶ基準を持ったうえで活用することをおすすめします。

POINT 2 わからないことは聞きにいく

FPに相談に行けば、失敗はないのでしょうか?

わからないことを相談するのは大切ですね。ただし、保険の加入の仕方はFPが100人いれば100通りあって、正解はないと思います。保険商品は「晴れた日に傘を持って行くようなもの」と例えられますが、保険加入の時に「たら・れば」を想像しても、今一つピンとこないでしょう。

それよりも、保険に加入する目的は、リスクを被った場合の経済的補てんなのですから、「保険を使うことになる確率の高さ」を意識することが重要だと思います。

また、保険だけではなく、できることなら何にでも使える預貯金を準備しておくことや、公的制度、会社員なのか自営業なのかによって自分が使える制度をきちんと理解しておくことも大事です。そのうえで、足りない部分を民間の保険で補う。私は、例えばそんなふうにバランスよく備えるようにとお話しています。

がんとがん治療の知識、それに医療技術の進歩。思っていたより、がん保険の検討には勉強が必要なんですね。

そうなんです。医療技術が進歩していて、保険で保障される内容が今行われている治療方法に合っていない場合があります。

FPとしては、今のがん治療をきちんと説明し、加入している保険が万が一の時に役に立つのかを確認してもらうきっかけをつくることが本当に大事だと思っています。

がん患者の方々から、がん保険の見直しをしなかったことへの後悔の声をよく聞きます。保障内容や治療の変化に対して、きちんと情報提供してほしかったという人も多いです。せっかく入った保険が、いざという時に役に立たないのでは意味がありません。特にがん治療は高額な費用がかかることも多いので、がん保険選びは保障内容や治療の実態をできるだけ理解したうえで検討加入するようにしてほしいですね。

POINTまとめ

  1. 比較サイトはがん治療の知識をつけ、がん保険を選ぶ基準をもって活用する
  2. なによりも万が一のときに「役に立つ」がん保険であることが大切!定期的な見直しも必要