初めての人間ドックで乳がんが見つかりました

会社員の方だと年に一度、健康診断があると思うんですけど、私たち俳優って自営業なので、自ら病院に行って人間ドックを受けない限りは、なかなかチェックする機会がないんです。でも、なぜかそのときだけ、家族と一緒に受けておきたい、という気持ちになりました。たぶん何もないだろうけど、安心材料のために、って。仕事の都合もあり、結局私は、家族の後に受けることになりました。

普通に仕事もしていましたし、体調不良ということもなかったので、乳がんが見つかったときには「えっ、まさか私が」という言葉が最初に浮かびました。6ミリほどの本当に小さな腫瘍だったので、自分でチェックしていてもわからなかったです。先生に「ここですよ」って言われて、ようやくこれなのかな、というくらいでした。

病名がはっきりする前から、手術に向けて動きました。

エコー(超音波)で検査を受けて、再検査で生検[*1]となったのですが、その結果が出る前から、手術に向けて動いていました。というのは、そのときにやっていた仕事が終わり次第、手術を受けられるようにしておかないと、次に予定されていた舞台の稽古に間に合わなかったのです。ショックだったのを即座に前向きに変換して、先生と相談しながら、仕事の段取りのように早め、早めに準備しました。

[*1]患部の一部をメスや針などで取って、顕微鏡などで調べる検査。

自分の病状を、誰よりも深く理解しなければいけない。

最悪の場合をあらかじめちゃんと考えておかないと、結果が出てから動揺したら、いろんなことが判断できない、という想いでした。最終決断をするのは、私たち患者なんです。私の場合、乳がん乳がんなので切り方に関しても、切る位置に関しても、先生と相談して決めました。

映画やドラマで「宣告します、あなたの腫瘍は悪性です」と一方的に宣告を受ける場面とはずいぶん違いました。主治医の先生は素晴らしい方で、「組織検査をしないと腫瘍の性質がわからないので、取ってみてそれからですけど、もし手術になったら……」と、いろんな仮定の先の仮定、こうなったらこうですよ、と事細かくわかりやすく説明してくださいました。そのときは私も乳がんに関しては一般的な知識しかなかったので、助かりました。

その後、病院、先生と関わっていく中で、先生と対等に話ができるように勉強しなくちゃいけない、自分の病状を、誰よりも深く理解しなければいけない、ということがわかり、たくさん本を読みました。

生検の結果、悪性ということで手術が必要になったのですが、「乳房温存手術なのか、全摘で乳房再建するのか。ほぼ温存手術だけれど、切開してリンパ節の組織検査をしてみないとわからない」ということでした。結果的には温存手術となりましたが、手術前に形成外科も受診し、再建用のインプラントを選ぶなど、準備していました。

手術が済めば、もう大丈夫かと思っていました。

ステージ1と初期のがんでしたが、病理検査の結果、かなり活発ながん細胞だったということで、手術後は再発防止の治療が始まりました。放射線などの治療も受けました。今も病院には3カ月に1回通っています。

腫瘍は6ミリだったけれど、直径5センチ位くり抜いているので、手術後は見た目も違う。乳がんという病気は、病巣を取り除いただけではすまないデリケートな問題を含んでいると思いました。私は目標があると燃えるタイプなので、手術の翌日から先生の指導なしで廊下を歩き、ちょっと頑張りすぎて熱を出してしまいました。

今まで通りの自分が頑張ればすむという身体との向きあい方ではいけない、と学びました。身体の声を聴くこと、無理をしないこと。身体の負担になるような頑張りは邪魔なだけだ、と。

そこで、ストレッチやマッサージの方に来ていただいて、初めは足裏からほぐして、とにかく体温を上げて、免疫を上げようと切り替えました。生検のため、リンパ節を数個摘出したため、腕も上がらなかったので、手術後1週間で退院した後は、もともとやっていたヨガの先生にお願いして、オリジナルメニューでリハビリをしました。毎日マッサージしているので陥没も放射線の火傷の跡も、今はほとんどわかりません。

がん保険に入っていたので、ずいぶん助けられました

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もともとシングルマザーだったので、いざというとき子どもに負担をかけないよう、がん保険がん保険に入っていました。まさか使うとは思ってもみなかったけれど、ずいぶん助けられました。こんなにも役に立つものかと実感しています。手術をして、放射線などの治療も安心して受けられました。

マッサージやトレーニングにも使いました。身体にいいこと、自分の身体のために、使おうと思ったんです。ちょっと頑張りすぎて、先生に叱られちゃいましたけど。

今の保険は、通院治療でも出るので、通院記録もちゃんと書いているんですよ。最初に診断時の給付金がおりたときには、4人の姉に人間ドックをプレゼントしました。

自分が発信することで誰かが前向きになれたら

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がんの患者仲間のことを「がん友」というのですが、ゴロがあまり好きではなかったので、がん=キャンサーだし、We canのcanもかけて、できることからやっていこうという意味で「Can友で支え合っていきましょう」とピンクリボンのフェスティバルで発表しました。

がん経験者の方が帽子かぶったり、ウイッグつけたりして話を聞きに来てくださっていたのですが、反応がよくてSNSで「Can友いいですね」とつぶやいてくださる方もいて嬉しかったです。Can友の方たちとお会いする機会もあり、とにかく痛くて悲鳴をあげながらでもマッサージすること、不格好でも体を温めるとか、自分の経験したことをお話ししたり、情報交換しています。

昨今、乳がんに関しても勇気ある発言があって、がん検診、受診の広がりがあると思うと、私自身もいいことばかりではないけれど、発信していきたいと思います。乳がんだと告げたとき、家族は衝撃を受けた顔をしていて、家族にとって不幸でしかないと思ったけれど、そんなネガティブな状況からでも、本当に小さな一歩でも前進、回復すると、大きな変化が実感できるんです。

病気中の座右の銘が湯川秀樹先生の「一日生きることは、一歩進むことでありたい」という言葉で、一日を生きることって実は大変なことで、たとえ小さな一歩でも前に進むことの大切さがわかりました。体調悪いときって、コーヒー飲めないんですよ。水以外受け付けない。でも少し良くなってコーヒー飲みたいなと思って一口飲んだときのおいしさったらないんです。朝、昼、夜、なんてことなく飲んでいたものが、こんなにおいしかったんだ、と。

息子は大人になりました。

息子には検査のときから、都度伝えてきました。「手術、入院です」って言ったときはさすがにショックを受けていましたね。留学先から帰ったときには「お茶飲む?」「コーヒー淹れる?」って聞いてくれたり、ものすごく大人になりましたね。元気な母なので、うちの母に限ってというのは大きかったんだと思います。親だって病気になるし、いつかは逝ってしまうんだというのを実感したのではないでしょうか。

がん検診を受けることの大切さを知ってほしいです。

何もないにこしたことはないですけれど、がん検診を受けることがどれだけ大切か、知ってほしいです。私自身、あのタイミングで人間ドックを受けなかったら、いつ受けたかな、と思うとちょっと怖いです。本当に命を救ってもらいました。自覚症状がなくても、早期の乳がんが見つかる方が今たくさんいらっしゃるし、年代によっていろんな適した検査方法があるので若い方にも受けてほしいです。

※がんを経験された個人の方のエッセイをもとに構成しており、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません。