健康診断から8ヶ月後、乳がんになった。

親友が乳がんになりました。彼女が心配でしょっちゅう会いに行っているうちに「ずっと健康診断なんかやってないんでしょ」と強く勧められて人間ドックを受けたんです。結果は何もなし。あと2年くらいは健康診断しなくてもいいかなあ、なんて変な油断もありました。2013年10月のことでした。

ところが、翌年の6月、お風呂に入っているときに乳房にしこりを見つけたんです。すぐに近くのレディースクリニックに行きました。その後、もっと大きい病院で診てもらった方がいい、と紹介状を書いてもらい、乳腺外科に行くことになりました。

5日後、細胞診の結果から、「乳がんです」と告知されました。一瞬、先生の言っていることが理解できないほどショックでした。その後生検を受けたのですが、8カ月前に人間ドックでマンモグラフィーも受けているのでそんなに進んでいないんじゃないかと思い込んでいました。あっても1cmくらいって思っていたら、4.5cmと言われて驚きました。

納得できなくて、セカンドオピニオンを2つ受けた。

ただ、がんと診断された後も、私自身はすこぶる毎日元気で、風邪もひかないし、疲れやすいということもなかったので、周りが心配するくらい前向きでした。困ったのは、乳がんの知識があまりにも乏しかったので最初の先生の話になかなかついていけなかったこと。乳房全摘と言われたのですが、そのことへの抵抗感がすごくありました。

親友のこともあり、乳がんの治療で有名な先生の名前だけは知っていたので、セカンドオピニオンとサードオピニオンも受けました。サードオピニオンを受けるころには私の知識も深まっていて、質問したいことも聞けるようになっていました。相性がよかったので、今でも3番目の先生にお世話になっています。

3つの病院の先生の診断は全員同じもので、やはり右乳房全摘でした。手術のやり方は病院によって違っていて、自分の納得できる治療を選ぶことができました。乳房全摘後、同時再建です。手術の日は、感傷的になることもなく、手術室ってドラマで見ているのと違うな、なんて思っていました。手術は無事成功、リンパ節への転移はなく、2週間の入院でした。

手術のときのことについて語る河合彩さん

お金がかかるのは治療費だけではない。検査で「検査貧乏」に。

4cmを超える大きな腫瘍だと、しっかり調べることができるそうです。先生の経験上、私はホルモン療法だけで済むタイプ。手術後の抗がん剤治療も必要なく、転移もなかったので放射線治療も必要ないタイプのがんだと思います、とのことでした。

ただそれは日本の検査では確約できず、アメリカにサンプルを送って遺伝子検査を受ける必要がありました。その結果で再発率が低かった場合は、ホルモン療法だけでよく、高かった場合はやはり抗がん剤治療をする、と。

アメリカでの遺伝子検査は保険がきかないため、驚くほど高価でしたが、お願いし、結果、再発率のすごく低いがんだったためホルモン療法だけでいいことになりました。セカンドオピニオンとサードオピニオンを受けたせいでもありますが、検査にお金がかかって、当時は「検査貧乏になる」って言ってました。

本を読みながら笑いかける河合彩さん

「親友同士で乳がんって、仲よすぎるでしょ」と言った彼と結婚しました。

私より先に乳がんになった親友の紹介で出会った彼。初めて会ったのは細胞診の検査の日でした。知り合ってすぐにがんだとわかったので、そのときは縁がなかったんだと思いました。病気の状況を伝えてみると、普通の人は「あと余命がどうのこうの」というトーンでしんみりしてしまう中、彼は「親友同士で乳がんって、そこまで仲良くなくてもいいでしょ」と。素っ頓狂な返事だったので、笑ってしまいました。沈まないでいてくれて、ありがたいな、と思いました。手術前も、検査で私が一喜一憂するときにも普通のトーンでいてくれてすごく救われました。

入院中はほぼ毎日来てくれて、主人は料理人なのでたまにお弁当をつくってきてくれたのが嬉しかったです。豪華な具がいっぱい入ったサンドイッチとか、太巻きとか、みょうが巻きとか。

主人は本当は子どもが好きな人。私はホルモン治療があるので、年齢的なこともあり子どもは難しいから結婚はないだろうな、と思っていました。でも「別にできなかったら2人でもいいよ」と言ってくれたので今があります。

手術後温泉に行ったときも、乳がん用の手術跡を隠す水着を一応購入していったのですが、「それ、なくても入れちゃうと思うよ」って言われて、意外と普通に入れちゃったんです。今は普通に友達と温泉に行ったりもするんですが、あの一言がなかったら多分入ってなかった。何気ない会話に救ってもらっています。

階段をのぼりながら上を向く河合彩さん

がんを体験して実感。必要なものがしっかり揃っていたがん保険。

がんで亡くなった父もアフラックのがん保険に入っていました。「アフラックはいいよ、すぐ対応してくれて」って言ってて。なので私はアフラックの医療保険とがん保険に入っていました。年齢的なこともあるので、がん保険は女性用のものを勧められて入っていました。

実際にがんを経験してあらためて気づいたことがあります。それは、アフラックのがん保険には、必要なものが最初からしっかり揃っている、ということです。一時給付金がバンとでても、その後の抗がん剤・放射線治療の保障がオプションだと困ります。私はたまたま抗がん剤治療も放射線治療も受けなかったけれど、父は受けていて、そこでお金がかかることはわかっていました。がんと抗がん剤治療、放射線治療って切り離せないので。

また、たまたま女性用のものに加入していたおかげで、乳房再建まで保障があり助かりました。ただひとつだけ後悔しているのは再発のときの保障。がん保険に入るときはまさか自分ががんになるとは思わなかったので、外したんです。1回がんを経験すると次は再発ということを意識しながら生きていかないといけないので、そこはつけておけばよかったなと思います。

がん保険と医療保険、両方が必要だと思う。

がんって今の時代は治療方法がたくさんあって、最先端のものになるとすごくお金がかかります。でも、その選択肢を経済的な理由で削るのは避けたいなと思います。いざというとき納得できる治療を選ぶために、がん保険は大切です。聞いた話によると、私が受けた遺伝子検査を金銭的な理由で受けられず、再発率が判断できないからという理由で最初から抗がん剤治療を選ぶ方もいらっしゃるようなんです。

がん保険というのは、がんになって生き抜くために必要な保険。金額的にも負担が大きいがんの治療のためにはがん保険が必要です。でもがん以外の病気になる可能性もあるので、そのときのために医療保険も必要だと思うんです。両方入っておくと、がんのときには両方から給付金が出るというよさもありますよね。

本を読みながら振り向く河合彩さん

「普通に生きてます」と言える幸せ。

私は元々アスリートなので、病気になるまでは勝つことが一番大事だと思っていました。トランプをやっても絶対勝ちたいというほどの。ただ、実際病気になってみて、こんなにもいろんな人が私のことを心配してくれているんだと感じたり、人の温かさ、優しさにふれて、これだけでも十分じゃないかと思うようになりました。

今日も主治医の先生に「体調は?」と聞かれて「普通に生きてます」と答えたら「普通がいいですよね」と言われました。私はがんを経験した今の方が幸せです。今は家族が一番大事ですし、自分の本当にやりたいことというのがはっきりしてきました。昔は、大事なことを後回しにしても大丈夫と思っていたけれど、大事なことから優先的にやるようになりました。がんだけでなく、交通事故かもしれないし、人間は必ずいつか命を落とすので、そういう意味でも後悔のないように生きたいって思っています。

手すりに手をかけてほほ笑む河合彩さん

胸をなくしても、いつかそれが何でもないって思える日がくる。

自分の胸がないことについては、多分なくす前の方が怖がっていたと思います。実際になくしてみたら、一日にそのことを考えている時間なんてごくわずかで、それ以外のことを考えている時間の方が長いんです。他のがんサバイバーの方の話を聞いても、みんな、今は受け入れて乗り越えています。自分の胸がないことを悩んで悩んで、その気持ちが変わらずずっと続くことはない、と同じ病気の方に知ってもらいたいです。

手すりに手をかけて笑う河合彩さん

がんをもっと冷静に捉えた方がいい。

がんって、誰もがなる可能性のある病気。特別なことじゃなくて、身近なもの。もっと冷静に捉えた方がいいんじゃないかな、と思います。すごく恐れる必要はないけれど、疑ってかからなくちゃいけない。定期的に健康診断、人間ドックを受けることが大事です。早い段階で見つければ、そんなに死に直結する病気ではないのですから。

自分は大丈夫という根拠のない自信のせいで、いざなったときに慌ててどうしようって大騒ぎになるのを避けられたらいいなと思います。まあ、いつかなるかもしれないから、とりあえず毎年10月に検診を受けるようにしよう、という風になったらいいですね。後回しにしないで、検診&がん保険、です。

2016年1月現在の情報を元に作成