[がんを知ろう]想いがあるから、伝えたい。そんな気持ちをまとめました。
中川 恵一 先生 Nakagawa Keiichi
がんと向き合う ひとの声 その想い伝えます。 遺伝子の突然変異がんになるのは運もある
東京大学医学部附属病院放射線科准教授/緩和ケア診療部長 1960年東京都生まれ。 東京大学医学部医学科卒業後、1985年東京大学医学部放射線医学教室入局。 社会保険中央総合病院放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師を経て現職。

がんは細胞のコピーミスから

人のカラダは約60兆個の細胞からできています。
細胞が分裂するときには、元のDNAをコピーして、新しい2つの細胞に振り分けます。人間のすることですから、コピーミスを起こすことがあります。これが遺伝子の突然変異です。
突然変異を起こした細胞は多くの場合死にますが、ある遺伝子に突然変異が起こると、細胞は死ぬことができなくなり、止めどもなく分裂を繰り返すことになります。この「死なない細胞」が、がん細胞です。
最近では、がん細胞は健康な人のカラダでも1日に5000個も発生しては消えていくことがわかっています。がん細胞ができると、そのつど退治しているのが免疫細胞(リンパ球)です。
しかし、年齢を重ねると、突然変異が積み重なってがん細胞の発生が増える一方で、免疫細胞の機能(免疫機能)が落ちてきます。生き残ったがん細胞が、やがて、塊としての「がん」になっていくのです。
長生きするとがんが増えるのは、突然変異が蓄積されるのと、免疫細胞が衰えるからなのです。がんが老化の一種と言われるのはそのためです。

正常細胞が腫瘍(新生物)となるまで

がんになるのは、遺伝より、生活習慣と運。

がんは、天から降ってくる見えない槍にたとえることができます。年齢とともに、槍の密度は高くなり、がんは増えていきます。タバコを吸えば、さらに密度は高くなります。逆に、運動や野菜重視の食生活は槍の密度を減らします。しかし、ヘビースモーカーでも、最後まで槍に当たらない人もいる一方、どんなに健康に気をつけても、槍に当たることはあるのです。
がんは一部の例外を除き遺伝しません。遺伝するがんは、がん全体の5%程度です。
むしろ「がんになる、ならない」は生活習慣と一種の「運」で決まるものと言えるでしょう。

がん治療の3つの基本 手術・放射線治療・化学療法(抗がん剤治療)

がん治療には、手術・放射線治療・化学療法(抗がん剤治療)という3つの柱があります。がんの完治には、これらをうまく組み合わせることが必要です。
①【手術】は、ある臓器にとどまっているがんとまわりのリンパ腺をメスで切り取る治療法です。がん細胞を完全に切除できれば、がんは完治することになります。ただし、切り取った部分以外にもがん細胞が存在すれば、再発の可能性が残ります。
②【放射線治療】は、臓器にできたがんにだけ、あるいは、予防的にそのまわりのリンパ腺などをふくめて放射線をかける治療法です。ある決まった範囲にだけ影響を与えるので、手術と同じ局所療法です。
③【化学療法(抗がん剤治療)】は、抗がん剤などの化学物質を点滴や飲み薬の形で投与するもので、化学物質が全身に行き渡る点で、手術や放射線治療と異なります。
全身に転移がある状況では、理屈上、唯一効果のある治療法です。しかし、ほとんどのがんで完治するためには、局所治療である手術か放射線治療か、どちらかが必要です。

Close Up
Let's go!がん検診

がんは不治の病ではありません。現在、全体で見れば、半分程度のがんは治ると言えます。がんがまだ1~2cm程度の時期、つまり早期に発見できれば、治癒率はぐんと良くなります。ただし、早期のがんでは、症状はまず出ませんから、早期にがんを発見するのは検診の役割です。症状が出ないうちに、定期的に検査することが大事です。
日本では、がん検診は、子宮頸がん、乳がん、大腸がん、肺がん、胃がんで有効と言われています。特に、子宮頸がん、乳がん、大腸がんは、検診の有効性が国際的にも証明されている「検診向きのがん」なので、受けないのは、どう考えてもソンです。がん検診は、全国ほぼすべての市区町村において安価に受けられます。住民票のある市区町村の窓口へ「がん検診を受けたいのですが」とお問い合わせください。
さあ、受けなきゃソン、がん検診。

日本が推進しているがん検診