健康コラム ちょっと気になる健康と病気のマメ知識!

知っておきたい「がん」のキホン、まるわかり。	~「がんの検査法ってどんなものがある?」「がんの3大治療法って?」~

「約35万人」「約70万人」「約152万人」、これらはすべてがんに関する数字です。約35万人はがんによる年間死亡者数、約70万人は1年間にがんにかかった人の数、そして約152万人は継続的にがん治療を受けている人の数です。これらの数字からも、がんがいかに身近な病気であるかがわかります。こうした状況だからこそ、がんに関心を持ち、きちんと向き合うことが大切です。今回はがんの基本情報をご紹介します。
コラムINDEX
ここまでわかったがん発生のメカニズム
がんの主な検査法
がんの3大治療

ここまでわかったがん発生のメカニズム

●がんは遺伝子の異常細胞が増えて大きくなったもの

私たちの体は約60兆個の細胞からなっています。これらの細胞は、体が本来持っている調節機能のもとに、増殖したり分化したりして正常な組織をつくりあげ、それぞれが秩序だった機能を維持して生命活動を営んでいます。

細胞の中には核と呼ばれる袋のようなものがあり、そこに遺伝子が含まれるDNAがあります。その遺伝子に、何かのきっかけで突然、異常(変異や欠失など)が起こることがあります。ただし、遺伝子の異常自体は、毎日、何千何万カ所で起きており、その後正常に修復されます。修復されない異常細胞はすぐに死んだり、免疫に退治されたりして、体全体の秩序は保たれています。ところが、中には何重もの防衛線をくぐり抜ける異常細胞もあります。

異常細胞は次々と細胞分裂を繰り返し、何年から何十年という長い月日をかけて、ある程度の大きさ(塊)になると、私たちの目で捉えられるようになります。これが腫瘍、すなわち「がん」です。

図1/がんと遺伝子の関係

●がん発生にかかわる3種類の遺伝子

私たち人間の遺伝子の数は2万~3万といわれています。その中には、がんの発生にかかわる遺伝子があり、それらは主に3種類に分けられます。細胞の増殖を促す「がん遺伝子」と細胞の増殖を止める「がん抑制遺伝子」、そして傷ついた遺伝子をもと通りに修理する「DNA修復遺伝子」です。

例えばがん遺伝子に異常が起こると、増殖のシグナルを出し続け、まるで車のアクセルを踏み続けたまま戻らなくなったような状態を引き起こします。一方、がん抑制遺伝子が傷つくと、車のブレーキがきかなくなったかのような感じで、やはり細胞の増殖にストップがかかりません。加えて、DNA修復遺伝子が働かなくなると、遺伝子の異常が加速されます。

その結果、本来であれば秩序正しい営みをしているはずの細胞が、無秩序にどんどん増え続けていきます。

●異常遺伝子がすぐに「がん化」するわけではない

がんに関係する遺伝子に異常が起きたら、その細胞がすぐにがん化するかというと、そういうわけではありません。複数の遺伝子の異常が少しずつ積み重なることで、細胞はがん細胞へと変貌していくと考えられています。

がん細胞は性質も正常細胞とは異なります。侵略や破壊を好み、周囲の組織や臓器に侵入(浸潤)する能力も持ちます。さらに悪性度を強めると、血液やリンパ液に乗って遠くの臓器に移り住む(転移)ようにさえなります。

がん細胞は転移に関しても、独特な特徴を持っています。どこにでも転移するわけではなく、えり好みをするのです。例えば、胃や大腸にできたがん細胞は肝臓や肺に、乳房にできたがんは肺や肝臓、骨などに転移しやすいことがわかっています。それは、植物の種が適した土壌でのみ芽を出すのに似ています。研究者たちはこの現象を「seed and soil theory(種と土壌理論)」と呼んでいます。

●早期発見に有効な「がん検診」

がんができた場所(原発巣)にとどまっていれば、そこのがんだけを手術で取り除けば、ちょうどおできを切除したときと同じで、治療は難しくありません。しかし、転移が起きていると治療は難しくなります。したがって、原発巣にとどまっているがんのうちに発見し、対処することが大切です。

早期発見に役立つのが「がん検診」です。特に肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん、子宮頸がんは検診による早期発見、早期治療の効果が示されています。ぜひ定期的に検診を受けましょう。

■遺伝子に異常をもたらすものとは がんは遺伝子の異常によって起こるものですが、この異常をもたらすものには、遺伝的要因と環境要因があります。遺伝的要因とは、いわゆる「がんになりやすい体質」を指します。しかし、遺伝的要因でがんを発症する割合は低く、むしろ環境要因のほうが、影響が大きいことがわかっています。環境要因とは、喫煙、塩分や脂肪の取り過ぎ、ストレス、大気汚染、紫外線など。できるだけこうした要因を避けるように心がけましょう。それががん予防につながります。

がんの主な検査法

●第一段階は「視診」と「触診」

がんの検査の第一段階ともいえるのが、体に異常がないかを医師が見たり(視診)、触ったりする(触診)検査です。特に、乳がんの場合、しこりがないかを調べる触診はがん発見に有効とされています。

視診については、外側から見るだけでなく、内視鏡を使って、体の内部を観察することもあります。レンズのついた細長い管を体内に挿入し、直接組織を観察するもので、病変の撮影をはじめ、組織を切除・採取して調べる「生検」(後述)もできます。内視鏡検査は、食道、胃、十二指腸、大腸、肺、膀胱、肝臓などのがんに行われます。

●がんの有無や進行具合などを調べられる「画像検査」

【X線検査】

X線には空気や脂肪を透過しやすく、筋肉や骨に吸収されやすいという特徴があります。この特徴を利用したのがX線検査です。例えば、肺は内部に空気がたくさんあるため、通常であれば内側が黒く写り、周囲の組織は白っぽく写ります。ところが、内部の空間を肺がんがふさいでいると、そこに白い影が現れます。乳がんを調べるマンモグラフィも、X線検査の1つです。

X線を照射しただけでは写りにくい胃や大腸などには、バリウムなどの造影剤を使った造影X線検査が行われます。

【CT検査】

X線装置を360度回転させて撮影し、コンピュータを利用して体を輪切りにしたような画像を得るのがCT(コンピュータ断層撮影)検査です。通常のX線検査ではよく写らない臓器も調べられ、より小さな病変も見つけられます。

【MRI検査】

磁気を利用して、体の断面像を映し出すのがMRI(磁気共鳴画像)検査です。縦だけでなく、横・斜めなどあらゆる角度の断面像が得られます。肺、肝臓、乳、子宮、膵臓(すいぞう)などさまざまながんの検査に用いられます。

図2/MRI検査

【PET検査】

がん細胞は正常細胞に比べて食欲が旺盛です。その性質を利用したのがPET検査です。栄養源であるブドウ糖に放射性物質を組み込んだ特殊な検査薬を体内に注射して、特殊カメラを使って撮影します。この物質がたくさん集まっているところに、がんが疑われます。場合によっては5ミリ程度のがんも発見できます。

最近では、CTと組み合わせたPET-CTも導入されています。

【超音波検査】

超音波を当てて、体内から跳ね返った超音波を検出して画像化する検査です。前立腺や乳腺、甲状腺、肝臓、腎臓など、体表に近い臓器の観察に適しています。リアルタイムの画像が見られるので、画像を見ながら針を刺し、細胞や組織を採取して調べることもできます。

図3/超音波検査

●がんの疑いがある場合に行う、さらに詳しい検査

【腫瘍マーカー】

がん細胞は増殖する過程で、特殊な物質をつくりだします。この物質を腫瘍マーカーと呼びます。血液中の腫瘍マーカーを見つけて、がんか否かを判断していくのが、この検査です。

マーカーの値により、がんの進行具合を予測したり、治療効果の目安を知ったりすることができます。術後の再発を発見する手段としても有効です。

腫瘍マーカーの中には、大腸がん、胃がん、肺がん、乳がんなどで増える「CEA」、膵がん(すいがん)、胆道がん、胃がん、大腸がんなどで増える「CA19-9」などのほかに、肝がんの「AFP」、前立腺がんの「PSA」のように、特定のがんで増えるタイプもあります。

特にPSAは前立腺がんの疑いのある人をふるいにかけるスクリーニングでも活用されるようになり、早期発見が可能になっています。

【生検(病理診断)】

がんが疑われる組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べるもので、がんであるかどうか、最終確認に使われる検査です。

最近では、生検用に採取した組織の一部を使って、遺伝子検査を行うこともあります。

■大腸がんのスクリーニングに用いられる便潜血検査 便の中の血液の有無を調べる検査で、大腸がんの患者さんの約6割は便潜血検査でがんが発見できるといわれています。検査は1日1回、2日間便を採るのが一般的です。便潜血検査の結果が陽性であれば、精密検査を受ける必要がありますが、実際に精密検査を受けている人は6割にも達していません。もしがんに罹患している場合、放置しておくと生命にかかわることがあります。陽性の場合は、必ず精密検査を受けましょう。

がんの3大治療

●がん細胞を取り去る「切除手術」

がん細胞を切除し体外に取り去ってしまう外科手術は、がん治療のスタンダードともいえるものです。古代エジプトの医学について書き記した古文書にも乳がん手術に関するものがあるほどです。

従来は、がん細胞が発見された場所だけでなく、周辺の組織に浸潤している可能性を考え、それらも一緒に取り除く“拡大手術”が一般的でした。しかし、患者さんへの身体的負担が大きいことや手術後のQOL(生活の質)を考え、最近では、“縮小手術”が多くなっています。

開腹しなくてもよい内視鏡や腹腔鏡を利用した手術もかなり普及しています。かつては良性腫瘍の切除だけに用いられていましたが、今では適応条件が合えば、進行がんの手術にも用いられています。

図4/内視鏡による手術

■前立腺がんのロボット手術が保険適応に 手術ロボットを用いてがんの手術を行う医療施設が徐々に増えています。手術ロボットといっても、機械が勝手に動くわけではありません。患者さんの腹部に開けた小さな穴に2本のアームと内視鏡を挿入し、医師が遠隔操作機器の前で画像を見ながら、操作し、手術を行います。ロボット手術は心臓外科、胸部外科、婦人科、泌尿器科などで行われていますが、圧倒的に多いのは泌尿器科での前立腺がん手術です。2009年には前立腺がんでのロボット手術が先進医療に承認され、さらに2012年4月に保険適応となりました。

●がん細胞を死滅させる「放射線療法」

X線・ガンマ線などの電磁波や、粒子線などをがん細胞に向かって照射し、がん細胞を殺してしまうのが放射線療法です。放射線療法単独で行われることもありますが、これに外科手術と化学療法(後述)を組み合わせる治療も多く行われています。

放射線療法の最大のメリットは、体を切る必要がないこと。そのため、肉体的負担が比較的少なく、また臓器の形態や機能を温存できます。反面、正常細胞も傷つけるため、むかつき、嘔吐、倦怠感、血行不良といった副作用が現れやすくなります。

●薬でがん細胞をやっつける「化学療法」

手術や放射線による治療法が、患部にピンポイントに有効なのに対して、効果が全身に及ぶのが抗がん剤を用いた化学療法です。したがって、転移した、あるいは転移の可能性があるといった場合や血液のがんなどに有効です。最近では、手術前に化学療法でがんを小さくしておいてから手術を行うケースも多くなっています。

薬の影響は正常細胞にも及ぶため、むかつき、嘔吐、脱毛、口内炎といった副作用が起きやすくなります。

そこで新しく登場したのが分子標的薬です。これは、がん細胞だけに、あるいはがん細胞に多く見られるタンパク質などの分子を狙って攻撃し、がんの増殖をストップさせようというものです。現在、使用が認められているのは、乳がんにハーセプチン(一般名トラスツズマブ)、肺がんにイレッサ(一般名ゲフィチニブ)、大腸がんにアバスチン(一般名ベバシズマブ)などです。ただし、分子標的薬にも副作用がないわけではありません。イレッサに関しては、劇的に効いた人が多くいる一方で、間質性肺炎で亡くなる人が報告され、社会問題となりました。

そのため、がん薬物療法専門医制度を整えるなど、安全性を高めるさまざまなシステムづくりが行われています。

図5/分子標的薬の作用と仕組み(例:ハーセプチン)

●早期発見・早期治療のために、がん検診を受診しましょう

がんは初期にはほとんど自覚症状が現れません。自覚症状が現れたときには、がんは周囲の組織に浸潤している可能性が高くなります。あるいは、他の部位に転移しているかもしれません。がんが進行すればするほど、治療も困難になってきます。

こうならないためには、自覚症状が現れる前に、少しでも早くがんを見つけることが大切です。それにはがん検診が有効です。職場や自治体で行われているがん検診などを利用して、がんの早期発見・早期治療に努めましょう。

■副作用の少ない粒子線治療に注目 X線やガンマ線に比べてがん病巣に集中して照射できるため、正常細胞への影響が少ないと注目されているのが粒子線治療です。粒子線の最大の特徴は、体のある一定の深さに達するとエネルギーを放出することです。この性質を利用して、がんの存在する位置で最大のエネルギーを与えようというのが粒子線治療です。ただし、胃や大腸などの消化器のがんや、白血病のように全身に広がるがんには適していないとされています。現在、粒子線治療を行っている施設は国立がん研究センター東病院(千葉県)など9施設ですが、数年後はもっと増える予定です。

協力:オーエムツー(荻 和子)