20代から80代の方まで、幅広い年代のお金の相談を受けるプロ

FPになって現時点で27年目を迎えます。無料での相談会なども含めると、これまでの相談件数は延べ4,000件ほどにのぼるでしょうか。

FPには「若い共働き夫婦の相談が得意」「高齢者の問題に強い」といった特定の「強み」を掲げている方が多数いますが、私の場合は全方位型。シングルの若いお客様もいれば、80代で相談に来られる方もいます。世代、性別を問わず、「どんなご相談でもどんとこい」が私のモットーです。

お客様からご相談を受ける上で私が大切にしていることは「中立」よりも「相談者寄り」であること。といっても相談者の“気持ち”に寄りそうだけではありません。「家を買いたい」と相談を受けたとき、もしその住宅ローンの計画では将来破綻の可能性があれば、迷わず別の提案をします。その人の今の気持ちよりも、“将来の生活”に目を向けるようにしています。

1回のご相談は2時間ですが、そのうち1時間以上は、まずその方の現状や、やりたいことについて詳しく聞いていきます。それを踏まえた上で、お客様自身が気付いていないことをアドバイスする。何度もアポイントをとって相談を重ねるやり方もありますが、私は聞き取りからアドバイスまでを1回で完結するので、商売としてはうまくないかもしれません(笑)。でも、その時のことを覚えていてくださって、5年、10年経ってからまたご相談に来る方もいらっしゃるんですよ。

深田晶恵さん

乳がんと言われても、知識があったから落ち着いていられた

2015年の秋に私は乳がんのステージⅡBと診断されました。がんに罹患した家族のつきそいで病院に行ったとき、ついでに検査を勧められて、たまたま発見できたんです。超音波検査のときに、片方だけやけに時間が長い。これは何かあるかなと思いました。

実はその時、がんと診断される直前に長年抱えていた問題がようやく解決し、これからは仕事を思い切りがんばろうと決意した矢先だったので、それができなくなったことが本当につらく悔しくて、夫に電話で報告をしたときには思わず涙が流れました。

けれども確定診断を受けたとき、あまり動揺することはありませんでした。私は仕事柄、さまざまな方とお会いしています。がん経験者のお話を聞く機会も少なくありません。いろいろな事例を知っていましたし、がんはいつかはかかる病気。そう考えていたので、「がん=死」と結びつけることなく、「予想より早く自分の順番が来たんだな」と比較的、冷静に受け止めることができたように思います。

治療中に行った“患者としての創意工夫”

乳がん患者になってからは、私の得意技が治療生活に役立ちました。それは創意工夫。私は昔からあれこれ工夫をしてものごとにあたるのが好きなんです。

乳がんの確定診断を受けると真っ先に経験者に話を聞いて、まずセカンドオピニオンを受け、その上でがん専門の病院に転院しました。

乳がんの場合、ホルモン受容性や、リンパ節の転移があるかないかなどによって、抗がん剤を使うかどうか、使うとしたら何の種類を使うのか、部分切除か全摘か、ホルモン療法を行うかどうかなど、治療方法がいろいろと違ってきます。できるだけ勉強しておくと、自分で納得した治療方針を受けることにつながります。

また、医師のお話を聞く際には、あらかじめ質問項目をまとめたノートを用意して臨みました。選んだノートは表紙が硬いA5サイズのリングノート。これなら膝に置いてペンを走らせやすいんです。質問に対する医師の答えをすかさずノートに書き込めば忘れることもありません。これはとても役に立ちました。

深田晶恵さん

深田晶恵さん

医師だけでなく看護師さんとも良好なコミュニケーションを心がけました。ネームプレートを見て、必ず目を見ながら名前で呼びかけるようにしたんです。誰でも名前で呼ばれた方がうれしいですよね。私のことも覚えてもらいやすくなります。これも工夫の一つです。

情報を選ぶことがとても大切

情報の取捨選択にも工夫を凝らしました。がんに関する情報は氾濫していますが、信憑性に欠けるものもたくさんあります。そこで、私は特に治療の最初の段階では、信頼できる公的機関や医療機関の情報に絞って読むようにしました。どのように信頼できる情報にたどり着けば良いか迷うかもしれませんが、私の場合、この時点では患者さんの個人ブログは読まず、病院のラックにあるパンフレットや、日本乳癌学会が発行している「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」を参考にしていました。

逆に、抗がん剤投与を始めてから参考にしたのは患者さんの個人ブログです。治療中には、髪やまつげが脱けたり、足がむくんだり、しびれがきたり、ウィッグにより頭皮が蒸れたり、体にはいろいろな変化が起こります。そんなときに、患者さんは日々の生活の中でどんな工夫をしているのか、経験者ならではのちょっとしたことが参考になるんです。ただし、個人ブログには不確かな情報も多く混ざっていますので、それらも一緒に読み込み過ぎないように気を付けることも、大切な工夫の一つです。

仕事とがん治療を両立していくために

乳がんになってからも私は基本的には仕事を続けていました。といっても治療があるので、その制約の中で動かなくてはなりません。そこでまた“工夫”の出番です。

病院によって治療の予約方法は異なりますが、抗がん剤治療の際には、私は担当医にお願いして木曜日の午前中枠にしてもらいました。月〜水曜日は通常通りに働き、もし翌日に副作用で具合が悪くなっても金曜日だけお休みすれば、金土日と休めるからです。

放射線治療は、月~金曜日に毎日の照射でそれを6週間続けるというものでした。スケジュールを管理しないと仕事に影響が出そうと思ったので、治療が始まるより前に予約の取り方や予約開始日を調べました。おかげで希望通りの「朝1番の予約」を取ることができ、毎日10時半にはオフィスで仕事を始めることができました。準備は大事ですね。放射線を当てる場所によるとは思いますが、私は幸い、副作用はほとんどなかったです。

がんと診断されるとショックで会社を辞めてしまう方もいますが、その後の治療費や生活のことを考えるとなるべく仕事は続けた方がいいと思います。特に、がん罹患時に付加給付金が出る健康保険組合に加入しているなら、やめるのはもったいないです。

また、職場によっては時間休を取得できるところも増えています。私のお客様で、お昼休みの前後に1時間の時間休を取り、出社しながら放射線治療を乗り切った方がいました。さまざまな制度を活用して、働きながら治療を続けることも可能なことを、ぜひ知っていただきたいですね。

深田晶恵さん

「がん」はライフイベントの一つ。自分に合った備えを

FPの相談では、結婚や出産、家の購入、子どもの教育、病気、老後など、さまざまなライフイベントに関する相談を受けています。いまや2人に1人ががんになる時代です。「がん」もライフイベントの一つとして考えてみてはいかがでしょう。

病気や入院した際の金銭的なリスクは、その人の属性によって異なります。例えば、公務員や会社員、共働き、付加給付金のある健康保険組合の加入者の方などはリスクが相対的に低いのですが、シングル、一人暮らし、フリーランスの方は相対的にリスクが高い。シングルには代わりの人がいないですし、一人暮らしでは家賃を払えなくなる恐れがあります。フリーランスは入院すると売上がゼロになってしまいますよね。
大きな病気に罹患した時の金銭的リスクの高い方は、病気全般の治療に備えて、保険に入っておくことをお勧めします。

また特に、子育てやマイホーム購入、子どもの進学など、貯蓄しにくかったり、貯蓄が一気に減るライフイベントがあった直後は、貯蓄だけで万一の大きなリスクに備えるのは大変です。そういう場合も、保険を使ってその時期を乗り越えるといいでしょう。

一生涯のうちに
がんと診断される人の割合は?

2人に1人2人に1人

(※1)(※2)国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」グラフデータベース
累積罹患リスク(2018年のデータに基づく)をもとにアフラック作成

がんに備えるならやはりがん保険

がんになると、どのくらいお金がかかるのか不安に思う人は多いと思いますが、私の場合、入院費や手術代、その他の治療費は、高額療養費制度を使って月10万円もいかない程度で収まりました。

それよりも、意外な出費だったのは、抗がん剤治療の副作用による脱毛をカバーするためのウィッグです。値段は安いものから高いものまで幅がありますが、私は人前に出る仕事ですし、取材を受けることも多いので、できるだけ自然に見えるものを選びました。メンテナンス料も含めて30万円ほどかかりましたね。しかも、どうしても消耗してしまうので、数カ月後にもう一個追加購入しなければならなかった。この出費は痛かったです。
そのほか、むくみで足のサイズが変わり、靴を全部買い替えなければならなかったのも想定外でした。

そういう点では、28歳のときに加入していたがん保険には助けられました。がんと診断されると受け取れる「がん診断給付金」は、治療だけではなく、ウィッグ購入費などにも自由に使えますから。自分でがんになってみて改めて、いろいろなことに使えるお金を保障してくれるがん保険のありがたみを実感しました。

もし自分が、身近な人が、がんになったら

もし、自分ががんになったら、誰に伝えるのか、相談するのかを迷う人も多いと思いますが、私の経験から思うのは、言いたくない人には言わなくてもいいということ。仕事上、どうしても上司に報告する必要はあると思いますが、それ以外の誰に告げるかは患者自身が選べばいい。言いたくない人には言わなくてもいいんですよ。決定権は患者側にあります。

もっとも、相談先がわからない、友人や同僚といった身近な人には相談できない、相談したくないという方も多いかもしれませんよね。そんな方には「アフラックのよりそうがん相談サポート」[*1]のような窓口は助けになると思います。

[*1]がんかもしれないと思ったときから、がんの治療・療養中、治療後の日常生活への復帰まで、様々な場面でがんに関するお悩みやお困りごとを、専門知識を持った相談員へご相談いただけるがん保険の付帯サービス

では、もし身近な人ががんになったら──。そのときはまず、「話を聞かせて」と声をかけてみてはいかがでしょう。「聞くだけでよければ聞くよ」。そんなふうに話しかければ、相手も安心して心を開いて話をしてくれるように思います。

聞く側の人も、そこで聞いた話は、後で自分の役に立つんですよ。繰り返しになりますが、がんは誰もが経験するライフイベントの一つと考えた方がいい。身近な人の話を聞く経験は言ってみれば疑似体験です。自分ががんになったときに役立つし、診断を受けたときのショックも和らぐかもしれません。

声をかけようか、どうしようか。そう迷っているのであれば、ぜひ「聞かせて」と言葉をかけてみてください。

2023年1月現在の情報を元に作成

※がんを経験された個人の方のお話をもとに構成しており、治療方法や治療に関する費用などは個人の例です。すべての方に当てはまるわけではありません。