健康コラム ちょっと気になる健康と病気のマメ知識!

第1位 読者投票 毎日ちゃんと眠れていますか? ぐっすり眠って、すっきり目覚め

ここ1カ月間、あなたは睡眠で休養が充分にとれていますか。平成24年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)では、この問いに「まったくとれていない」、「あまりとれていない」と回答した人が、全体の約16%を占めました。睡眠は、脳と体を休ませ、翌日しっかりと過ごすために必要なもの。質のよい睡眠で健やかな毎日を過ごしましょう。
コラムINDEX
質のよい眠りが、脳と体にもたらす効果とは?
こんな睡眠の悩み、ありませんか
ぐっすり眠って、すっきり目覚めるためのヒント

質のよい眠りが、脳と体にもたらす効果とは?

■深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠を繰り返す「眠りのしくみ」

睡眠不足が続くと、集中力がなくなったり、体がだるくなったり、イライラしたりとさまざまな不調が現れます。ひょっとしたら、このような状態を生じさせないために私たちは、眠るという行為をしているのかもしれません。というのも、人がなぜ眠るのか、まだはっきりとはわかっていないからです。

ただ一方で、脳科学などの研究が進むにつれ、明らかになってきたことがあります。それはどうも眠りが大脳と深く関係しているらしいということです。

人の脳は、大脳が大部分を占め、高度な機能を営んでいます。しかし、何十時間も働き続けられるほど、丈夫にはできていません。大脳がオーバーヒートしないように、私たちは眠ることによって大脳を休息させているのではないかといわれています。

睡眠中の大脳の状態は一様ではなく、大きく2つのパターンをとります。

一つは、レム睡眠(急速眼球運動:Rapid Eye Movementを伴う眠り)と呼ばれるものです。体は眠っていますが、大脳は起きているときと同じくらい活発に動いていて、眠りは浅く、夢をよく見ます。

もう一つはノンレム睡眠で、体はあまり眠っておらず、寝返りを打つなどよく動きますが、大脳の活動は緩慢になり、休息しているような状態になります。いわゆる、深い眠りです。

もし、睡眠の大きな役割が大脳を休息させることだとしたら、大脳が休まないレム睡眠にはどのような役割があるのでしょうか。

睡眠は通常、下図のようなリズムをとります。

睡眠のリズム

眠りにつくと、最初に現れるのが深い眠りのノンレム睡眠です。続いて、眠りは浅くなってレム睡眠になり、約90分周期で、ノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返されます。

注目したいのが、起床時間が近くなるにつれ、レム睡眠が増加することです。浅い眠りのレム睡眠が時間の経過とともに増加することで、ノンレム睡眠でしっかり休息した大脳が目覚めたときにスムーズに活動できるように、いわばウオーミングアップさせているのです。

ぐっすり眠っているときに目覚まし時計などで起こされると、1日中頭がボーッとしているという経験はありませんか?これは、起こされたとき、大脳がノンレム睡眠状態にあったためです。また、「眠る時刻から90分の倍数で目覚めるとすっきり起きられる」とよくいわれますが、これは90分周期で訪れる眠りの浅いレム睡眠時に目を覚ますためです。ただし90分はあくまでも平均値で、周期は人によって異なります。目安と捉えたほうがよいでしょう。

■脳と体の疲れを解消するだけではない眠りの効果

睡眠の役割は、大脳の休息だけではありません。

昔から「寝る子は育つ」といわれますが、あながち間違いではありません。睡眠中、特にノンレム睡眠時に、体の成長を促す成長ホルモンが大量に分泌されるからです。「美肌は夜つくられる」「睡眠不足は肌に悪い」などもよく耳にする表現ですが、これらも成長ホルモンが影響しています。成長ホルモンは大人になっても分泌され、壊れた細胞や古くなった細胞を新しい細胞に入れ替える役割を担います。

もう一つ、「風邪は寝て治せ」とよくいわれます。実際、風邪になったら何はともあれ寝るに限る、という人は多いのではないでしょうか。細菌やウイルスに感染すると免疫機構が働き、白血球からサイトカインという生理活性物質が放出され、細菌やウイルスの増殖を抑えます。このサイトカインには、強い眠気を引き起こす作用があることがわかっています。よって脳や体を眠らせて余計な活動をしないほうが免疫機構が働きやすいと考えられ、「風邪は寝て治せ」は理に適った治療といえます。

8時間睡眠が健康にいいの?

「健康のためには8時間眠るのがよい」という説が広く知られていますが、8時間睡眠に科学的な根拠はまったくありません。ナポレオンは3時間しか眠らなかった、アインシュタインはいつも10時間以上寝ていたなどという話が伝わっているように、1人ひとり適した睡眠時間は異なります。また、年齢によっても体が要求する睡眠時間は変化します。「ぐっすり眠ったと満足できる」「朝、すっきり目覚められる」「日中眠気に悩まされることなく元気に活動できる」などの状態であれば、それがその時点のその人に適した睡眠時間といえます。8時間睡眠説にとらわれないようにしましょう。

こんな睡眠の悩み、ありませんか

眠りの悩みを抱えている日本人は5人に1人といわれています(厚生労働省 e-ヘルスネット)。眠りの悩みは不眠をはじめ、さまざま。中には病気が眠りのトラブルをもたらしていることもあります。

■睡眠不足や不眠が肥満を引き起こすってホント!?

眠りの悩みで最も多いのが「忙しくて充分に眠る時間がとれない」といった睡眠不足や、「なかなか寝つけない」「夜中に何度も目を覚ます」といった不眠です。

最近のさまざまな研究で、睡眠不足や不眠が続くと、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の引き金になることが明らかになっています。

睡眠不足や不眠になると、脳に知らせる満腹ホルモンのレプチンの分泌が減少し、満腹感を覚えにくくなります。また、食欲を増進させるホルモンのグレリンの分泌が増え、過食が起こりやすくなります。こうしたことから肥満が生じやすくなると考えられています。

慢性的な睡眠不足や不眠は、血糖値を上昇させる作用をもつホルモンのコルチゾーンの分泌を増加させ、糖尿病のリスクが高まります。糖尿病になると、喉の渇きがあったり、夜トイレに行くことが多くなりがちで、これらが眠りを妨げ睡眠不足や不眠を招き、ますます血糖値を上昇させてしまうという負のスパイラルに陥りやすくなります。

睡眠時間が短いと自律神経が乱れ、睡眠中の血圧が下がりにくくなり、高血圧を生じやすくなります。

不眠はうつ病とも深い関係があることもわかっています。不眠の人はうつ病を発症しやすく、うつ病の人には不眠症状が多くみられます。

■不眠症の代表的な4つのタイプ

不眠によって日常生活に支障を来すと不眠症と診断され、治療の対象になります。

不眠症にはさまざまなタイプがあり、その代表が次の4つです。これらの症状を複数併せもつこともあります。

●入眠障害

「眠ろうと床につくけれどもなかなか眠れない」といういわゆる「寝つきの悪い」状態が続くのが入眠障害です。一般に、寝つくまでに30分から1時間以上かかり、それが本人にとって苦痛となっている場合は入眠障害と診断されます。

●中途覚醒

寝ついたあと、何度も目が覚めるタイプです。途中で目覚めても、再び眠りにつくことができれば問題はありません。しかし、「いったん目が覚めたあと眠れず困る」「何度も目が覚めてよく眠った気がしない」といった場合は不眠症と診断されます。

●早朝覚醒

起きようと思っている時間よりも早く目覚め、「もう一眠りしようと思っても眠れない」といった場合をいいます。高齢になると一般に、夜早く眠くなり、朝早く目覚める早寝・早起き型になる傾向があることから、早朝覚醒は高齢者に多くみられます。

●熟眠障害

ある程度眠っても、ぐっすり眠ったという熟睡感がないタイプです。

■不眠に病気が隠されていることも

心配事や悩み事があると不眠になりやすくなりますが、不眠の原因はそれだけではありません。ときには、病気が原因となって不眠を起こしていることがあります。

よく知られている病気の一つが、睡眠時無呼吸症候群です。睡眠時無呼吸症候群は、文字どおり睡眠時に繰り返し呼吸が止まり、無呼吸状態になる病気です。通常、呼吸が止まった状態は10~20秒ほど続きますが、長い場合には1分ほど続くこともあります。

呼吸が止まるのは、空気の通り道である気道の上部にあたる上気道が塞がるためであることが多いです。睡眠中は、健康な人でも仰向けになると、喉のあたりの筋肉が緩み、舌の付け根(舌根)などが自然に喉の奥のほうへ落ち込み、上気道が狭くなります。それでも通常は、上気道に充分な隙間があり、普通に呼吸ができます。ところが、例えば肥満だと、喉の内側に脂肪がついてもともと上気道が狭くなっているので、仰向けの姿勢では健康な人よりも気道が閉塞しやすくなります。また、狭い上気道に空気が無理に通ると、その摩擦でいびきが生じます。

呼吸が止まると体内は酸素不足になり、脳が目覚めます。すると緩んだ喉の筋肉が持ち上がり、呼吸が再開されます。睡眠中にこれが何度も繰り返され、脳が頻繁に覚醒するため、睡眠が浅くなります。そのため、日中、車を運転しているときなどに強い眠気に襲われたり、体がだるくなったりすることも多々みられます。

肥満以外にも、顎が細くて小さい、下顎が後退しているなどの場合も、睡眠時無呼吸症候群になりやすいといわれています。

治療には、鼻マスクから空気を送り込み、その圧力で睡眠中に上気道を広げた状態を保つCPAP(シーパップ)などが行われます。

不眠をもたらすそのほかの病気として、むずむず脚症候群があります。脚がむずむずしてじっとしていられず、寝つくことができなくなる病気です。この病気は、体の動きに関係する神経伝達物質のドパミンの機能が低下したり、ドパミンをつくるのに欠かせない鉄が不足したときに、起こりやすいことがわかっています。治療には、ドパミン作動薬や鉄剤などの薬が用いられます。

むずむず脚症候群と同様に、ドパミンの機能低下が関係しているのではないかといわれるのが周期性四肢運動障害で、寝ているときに脚がピクピク動くのが特徴です。こちらの治療も、ドパミン作動薬等、薬物療法が中心です。

■充分な睡眠をとっているのに眠くなる、過眠症

不眠症が何らかの原因によって夜しっかりと眠れないのに対し、夜、充分に寝ているにもかかわらず、昼間強い眠気に襲われ居眠りしてしまうという場合は、過眠症が疑われます。過眠症の中には、体質が原因で起こる病気もあります。その代表がナルコレプシーと呼ばれる脳疾患(睡眠障害)で、時と場所を問わず、突然10~20分程度の眠りに陥ります。薬物療法による治療が中心です。

■眠りの悩みが続くときは、医師に相談しよう

眠りの悩みが1カ月以上続いたり、生活に支障を来すような場合は、かかりつけの医師や認定医に相談しましょう。認定医は、日本睡眠学会のホームページで探すことができます。

なお、毎日の睡眠についてノートに記録し、受診時に提示すると診断に役立ちます。

日本睡眠学会のホームページ(http://jssr.jp/)

※別ウィンドウが開きます。

ぐっすり眠って、すっきり目覚めるためのヒント

眠りの治療をしている人も、治療をするほどではないけれど快眠が得られないという人も、生活上のちょっとした工夫で、眠りの質がよりアップすることがあります。

■体内時計を乱さない規則正しい生活が基本

快眠を得るライフスタイルを考える際のキーワードは“体内時計”です。

私たちの脳には、視交叉上核(しこうさじょうかく)という神経細胞の塊があり、その中に中枢時計遺伝子があります。また、肝臓や胃腸など全身のほとんどの細胞にも、末梢時計遺伝子があります。これらの時計遺伝子は24時間少々の周期で体内リズムをつくり、細胞の多くの活動を変動させています。

活動時には交感神経が、睡眠時には副交感神経が優位になりますが、これも体内リズムに沿ったもの。人間は昼に行動する昼行動物ですから、明るい間は交感神経を優位にさせ体温や血圧、脈拍などを高めて活動しやすくし、夕方から夜にかけて副交感神経を強く働かせて、これらを徐々に下げていき、休息しやすい状態に切り替えます。また夜になると、体内リズムに従って、脳内でメラトニンという睡眠物質の分泌量が増えてきます。このメラトニンが増加することで、私たちは眠くなってきます。

体内リズムに合わせた生活、言い換えれば体内リズムを乱さない規則的な生活を送ることが快眠を得るための基本です。

昼寝をするなら30分以内で

体内リズムの中に、午後2時ごろ体温が少し下がって、眠くなる時間帯があります。どうしても眠いときには昼寝をしましょう。ただし長い時間眠ると、夜眠れなくなるので要注意。長い時間眠ると、深い睡眠に入り、覚醒への切り替えがうまくいかないためです。昼寝に充てる時間の目安は15~20分。長くても30分までにしておきましょう。

■朝、光を浴びて体内時計をリセット

では眠りの質を上げるには、具体的にどうすればよいかを見ていきましょう。

体内時計は24時間少々の周期で時を刻んでいます。ところが、実社会では24時間で生活しています。このずれを調整してくれるのが「光」です。朝起きて光が目に入ると、その情報が視交叉上核(しこうさじょうかく)に伝わり、体内時計(中枢時計)がリセットされ、体は活動に適した状態に切り替わります。ですから、朝起きたら窓を開けて、太陽の光をたっぷり浴びて、体に新しい1日が始まったことを知らせましょう。太陽があまり入らない場合は、明るい照明をつけると同じような効果が得られます。体内時計がリセットされてから14~16時間後、睡眠物質のメラトニンの分泌量が増えてきます。

逆に、夜、明るい光を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられてしまいます。特に、パソコンやテレビの画面から発せられる光は思いのほか強いので、寝る直前までパソコン作業をしたりテレビを見たりすることは眠りを妨げる原因になります。

■朝食を抜くと、体内リズムが乱れる原因に

食事もとても大切です。胃腸などにある体内時計(末梢時計)を調整する信号となるのが食事だからです。起床後、1時間以内の食事により、末梢時計がリセットされ、中枢時計のリズムと同調します。朝食を抜くと末梢時計がリセットされず、2つの時計がバラバラに動くため、体内リズムが乱れます。

夕食は、午後9時ぐらいまでに済ませるのが理想です。末梢時計は、8~12時間の絶食後にはじめて食べた食事(朝食)によってリセットされます。夕食が遅いと、朝食までの時間が充分に確保されないため、リセットされにくくなります。

■運動や入浴で適度に体を温めて、寝つきをよくする

夜になると体温が下がってきますが、昼間に体を動かす機会が少ないと、昼夜の体温差が小さくなり、寝つきにくくなります。

そのような方は、寝る2~3時間前に運動をして、少し体温を上げておくと眠りに入りやすくなります。ただし、激しい運動は体温を上げすぎてしまうので、ウオーキングなどの軽めの運動や緊張をほぐすストレッチなどがよいでしょう。

また、入浴も運動と同じような効果を期待できます。就寝1~2時間くらい前に、39~40℃程度のぬるめの湯にゆっくり浸かるのがポイントです。寝る直前に熱い湯に浸かって急激に体温を上げると、血管が収縮して熱が体の深部に残り、逆に寝つきを悪くします。

■リラックスした状態で床につく

リラックスして副交感神経を優位に働かせると、眠りにつきやすくなります。音楽を聴く、アロマテラピーを楽しむ、カモミールやラベンダーなどのリラックス効果があるといわれるハーブティーを飲むなど、自分に合ったリラックス法を取り入れましょう。

なお、寝酒は、アルコールに睡眠作用があるものの、アルコールが分解されると目が覚めやすくなり、夜間後半の眠りを浅くし、早朝覚醒を招くことがあります。また、アルコールの利尿作用で、トイレに行きたくなり、眠りが妨げられることもあるので、寝酒はできるだけ控えめにしましょう。

コーヒーや紅茶、緑茶、チョコレートなどには覚醒作用をもつカフェインが多く含まれるので、寝る前にたくさん飲食すると、目がさえて寝つきが悪くなることがあります。タバコに含まれるニコチンにも覚醒作用があります。

■眠りやすい寝室環境をつくろう

寝室の環境が眠りを妨げることもあります。その端的な例が、「旅先などで枕が変わると眠れない」というもの。枕に限らず、敷布団やマットレスも、硬すぎたり軟らかすぎると、不自然な姿勢になって首や肩が痛くなり、快眠を得るのが難しくなります。

下のイラストを参考に、寝室の環境を見直してみましょう。

● 窓:街灯の明かりなどが室内に入ってくるときは、厚手のカーテンをかけるとよいでしょう。
● 室温:夏は24~26℃、冬は12~14℃が睡眠に適しているといわれます。
● 照明:真っ暗になると眠れない人は、白熱球の間接照明をつけるとよいでしょう。
● 枕・敷布団・マットレス:背骨のS字カーブを保てるものを準備するとよいでしょう。

眠れないときは、いったん寝床から離れよう

「床についたもののなかなか眠れない」というとき、「明日、早く起きて会社に行かなくてはいけないから寝なくては」などと思うと、それがストレスとなり、ますます目がさえてきます。眠れない状態が20~30分続いたときは、いったん布団から出てリラックスタイムとし、自然な眠気が起きるまで待つとよいでしょう。

私たちが過ごす時間の3分の1は睡眠に充てています。これを機に、ぐっすり眠れているか、自分の睡眠を見直して、快適な目覚めを手に入れましょう!

協力:オーエムツー(荻 和子)