子宮がんの種類

女性特有のがんとして、乳がんに並んで気になるのが「子宮がん」ではないでしょうか。子宮は月経や妊娠に関わる重要な臓器です。

子宮がんは子宮の入り口にできる「子宮頚がん」子宮体部の内膜にできる「子宮体がん」に分けられます。

子宮頚がんと子宮体がんのイラスト

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(2017年11月17日更新)によると、他の部位のがんと同様に全年齢の罹患率が増加傾向にありますが、中でも気になるのが若年層の子宮頚がん罹患者数の増加です。20〜30歳代の子宮がん罹患率に関して次表のように増えています。

子宮頚がんと子宮体がんの20~30歳代の罹患率推移の図
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(2017年11月17日更新)

体験者に聞いた、子宮頚がんはどんな病気?

子宮頚がんが若年層で増加している背景に、性交渉の早期化があると言われています。子宮頚がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染が大きな原因の一つとされており[*1]、性交渉によって感染します。そのため、性交渉経験者であればほとんどの人が感染するくらいありふれたウイルスであり[*1]、がん化するリスクもそれだけ多くの人にあるというわけです。

[*1]厚生労働省ホームページ「ヒトパピローマウイルス感染症とは」より

子宮頚がんに関する講演など啓発活動を行なっている阿南里恵さんも、不正出血をきっかけにレディースクリニックを受診して発見に至りました。

「最初は仕事が忙しかったから、そのせいだと思っていたんです」

そう語る阿南さん。会社員として精力的に働いていた23歳の時に子宮頚がんと診断されました。診断時にはかなり進行しており、子宮全摘出を経験されました。

23歳で子宮頚がんと診断された阿南里恵さん

「今までどんな病気も治ってきたから、治らない病気があるとは思いもしませんでした。転移している範囲が広い場合には手術ができない可能性があり、その場合には手術は中断して後は進行を遅らせる治療をすると言われて……。生まれて初めて、医療に限界があることを知りました」

子宮頚がんのリスクも知らず、それまで、全くがんとは縁遠い生活を送っていた阿南さん。突然の診断に、当初は現実感がなかったと言います。

「私の場合、抗がん剤治療・手術・放射線治療と進んだのですが、抗がん剤治療は言われるがままに治療を受けていました。それまで、治療について自分で考えることなんてありませんでしたから。いざ、手術を控えた時になって我に返ったんです。子宮摘出のことを母に相談したくてもできなくて。でも言わなくても母には伝わっていることがわかって、それでかえって決心がつきました」

阿南さんの場合は進行していたために全摘出となりましたが、早期発見であれば部分的に切除するだけで治療が可能になる場合もあると言います。そのためには検診を受け、早期発見することが重要だと阿南さんは語ります。

「若い人に子宮頚がんが増えているということが、当の若い人に浸透していないように思います」

各地で講演などを通じて若い世代にも子宮頚がんのことを伝えてきた阿南さんは、当の若い世代が「自分も子宮頚がんになり得る」という実感を持っていないように感じていると言います。

「実際に体験した身からすると、なると大変だよ!って思うんですけど……。それこそ歯医者さんで検診を受けるくらい身近に、自分たちの体に関心を持って欲しいと思っています」

子宮頚がんの早期発見の大切さについて語る阿南さん

実際に、厚生労働省の調査[*2]によれば、日本の子宮頚がん検診の受診率は42.4%。また、別の調査ではOECD加盟国で最低となっているそうです[*3]。任意型検診が主体であるアメリカにおいては84.5%といいますから、その半分というわけです。

[*2]厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査」より
[*3]厚生労働省「平成28年度がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン」ホームページより

「若い人ほど周囲の目を気にして検診に行きづらいかもしれません。保険証を使うことで婦人科に行ったことが家族にバレると嫌なのでしょう。そもそも普段から馴染みのあるところではありませんし。あとは診断されるのが怖いという意識もあるのかもしれません」

そのように分析する阿南さん。子宮頚がん検診に限らず、かかりつけの婦人科を持っておくと安心だと言います。

「婦人科での検診というと、診察台に乗ることに抵抗を感じる人もいると思います。でも、子宮頚がんは検診で発見しやすいがんなので、抵抗を乗り越えて検診に行って欲しいです。検診の前に見学や相談だけでも聞いてくれますし、肌荒れの相談でも受けてもらえますよ」

肌荒れの相談であれば、婦人科でも気軽に相談に行けそうですね。いきなり検診でなくても、まずは婦人科を身近に感じてもらえればと阿南さんは語っていました。

検診はどうやって受ければいいの? どんな内容なの?

検診は婦人科またはレディースクリニックで受けることができます。20歳以上の場合は可能であれば年に一度、少なくとも2年に一度は受診することが勧められています[*4]。

[*4]厚生労働省「子宮頚がん予防ワクチンQ&A」より

実際の検診方法は、問診のあと視診・細胞診が行なわれます。病院の混雑度にもよりますが、一般的に全体で1時間程度の検診となるようです。

受診当日は、まず問診票を用いて医師の診察が行なわれます。気になることや既往歴がある時は忘れずに伝えましょう。また、最近の月経がいつ来たかを記入しますので、確認しておきましょう。

問診が終わると検査室へ移動します。内診台と呼ばれる検査台に乗り、足を台に載せて股を開く格好になります。この時、お腹の上くらいにカーテンがあって、医師とは直接顔を合わせないようになっています。

そして、クスコという器具を使って膣を広げます。まずは医師が視診を行ない、続いて膣の奥にある子宮頚部の細胞を専用のブラシでこすり取るようにして細胞を採取します。

子宮頚がんの検診を受ける女性のイラスト

これらは数分で終わります。細胞の採取時に多少の出血を伴うこともありますが、痛みを感じることはほとんどありません。

一般的に、検査結果は1〜2週間ほどで出ます。必要に応じて精密検査へと進みます。

検査費用については各自治体が助成を行なっていることがあるので、お住まいの自治体に相談してみるといいでしょう。

なお、子宮頚がんの原因となるHPVのワクチンもあります。

経済的な不安に保険で備える

先ほど登場いただいた阿南さんはがん保険に入っていたため、診断後に診断給付金が出たそうです。

「保険について一番伝えたいのは、診断給付金は残しておいた方がいいということ。私は診断された時に、精神的に不安定だったこともあったので思い切って治療以外のことにかなり使ってしまいました。でも、ウィッグや入院用のパジャマ、医療用の弾性ストッキングなど治療に付随して必要な用品の購入、治療後の経過観察の検査など、結構お金がかかるんです。そういったものに使うために、診断給付金は残しておけばよかったと思いました」

高額療養費など公的な助成があるので、治療自体の経済的負担は少なくて済むものの、それ以外の出費はどうしても負担となってのしかかります。

そういった経済的な不安には、がん保険を活用することで備えることができます。がん検診を定期的に受けて早期発見に努めるのと同様に、保険も検討してみてはいかがでしょうか。

<お話を聞いた人>
阿南里恵さん
不動産ベンチャーで営業として勤務中、子宮頚がんが見つかる。抗がん剤治療ののち、子宮全摘出手術、放射線治療を経験。自身の経験からがんに関する講演などに精力的に取り組む。特定非営利活動法人日本がん・生殖医療研究会の患者ネットワーク担当。著書に『神様に生かされた理由——23歳でがんを宣告されて。』(合同出版)

<監修>
ともこレディースクリニック表参道
院長 出井知子 先生