「日本人に大腸がんが増えていると聞いたけれど、予防法はあるの?」
「大腸がんの検査って恥ずかしいし、痛そう……」
このように思われる方は、意外に多いかもしれません。

国立がん研究センターよると、大腸がんにかかる割合は、40歳代から増加し始め50歳代で加速し、高齢になるほど高くなります[*1]。
とはいえ、検査を敬遠する人が多く、なかなか見つかりにくいともいわれています。

そこで、大腸がんの検査や手術について、新宿内視鏡クリニック院長の谷口将太郎先生にお話をお聞きしました。

[*1]国立がん研究センターがん情報サービスのサイトの「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」による。

身近だけれど見つかりにくい大腸がん。その症状は?

食生活が変化することで日本人の大腸がん罹患率が増え、身近ながんになりつつあります。
谷口先生によると、大腸がんは日本の男性・女性ともに罹患率が増えているとのことです。原因は食生活の欧米化。動物性脂質(肉)や加工肉(ハム・ソーセージなど)を食べる機会が増えたことが原因とされているそうです。

大腸がんは早期に発見できればがんを完全に取り除ける可能性が高いのですが、初期段階では自覚症状がほとんどないため、見つけにくいのが難点です。
しかし治療後の経過が良いとされ、たとえ進行していた場合でも、他の臓器に転移していない場合は、完治できることが多いがんなのだそうです。

大腸がんの特徴と予防

では、どのような人が大腸がんになりやすいのでしょう?その特徴を谷口先生に聞きました。

「他のがんと同じく、肥満のほか、脂っこいものを食べる、運動不足、飲酒、喫煙などの生活習慣がある人はなりやすいです。大腸がんを予防したいのであれば、このような生活習慣を改めることはもちろん、食物繊維を多く摂取することや、腸内の善玉菌を増やすために発酵食品やオリゴ糖を摂るとよいですね」

健康な生活習慣を身につけるほか、大腸の場合、腸内環境を整えることも重要です。
大腸がんは検査をすれば見つかりやすいといわれますが、目立った症状が出ないために、検査を受けようという気持ちになりにくいもの。大腸がんの場合、表面で発生したがんが粘膜や粘膜下層まで到達しているものを早期がん、もっと深く、筋層まで到達したものを進行がんと定義しますが、進行がんの方でも半数はほぼ症状がありません。また、早期がんであれば多くの方にほぼ症状がないというのが現実です。
とはいえ、どのような症状があったら、検査を受けるのがよいかを谷口先生に聞きました。

「便秘、下痢をくりかえす、便が残っている感じがする、血便が出る、お腹が張っていると感じる、腹痛があるなど、今までになかった排便やお腹の症状が出てきた場合、または、貧血が起きる、嘔吐する、急に体重が落ちたなどの場合も、一度検査を受けてみることをお勧めします。特に40歳を超えると大腸がんリスクが高まるので、症状がなくても1度は検査を受けておく方がよいですね」

診察室で説明をする谷口先生

排便やお腹の具合がいつもと違うなと感じた時が、検査を受けるタイミングであるとのことです。しかし、大腸の検査というと大がかりで大変そう、痛そうなイメージがあり、おっくうになりがちです。実際はどうなのか、気になるところです。

検査内容と予防

大腸の検査は、便潜血検査と内視鏡検査の2種類があります。便潜血検査とは便を採取して検査する方法で、内視鏡検査とは下剤で大腸をきれいにし、肛門から内視鏡を挿入して大腸を観察する方法です。
この2つの検査について谷口先生に聞いてみました。

「便潜血検査だと簡単ですが精度が低く、大腸がんの4割を見逃してしまうといわれています。どちらかというと、内視鏡検査の方がお勧めで、一生に1回受けるだけで大腸がんでの死亡確率を7割減らせるといわれています。
他のがんと比べて大腸がんは進行が遅く、検査をして何も見つからなかった人が1~2年経って、進行がんが見つかるというケースはほとんどありません。
内視鏡検査を1回行うと、大腸の状態によりどのくらいの頻度で検査を行えばよいかが分かります。特に問題がなければ4~5年に1回でよいでしょう。一方で大腸ポリープが多く見つかれば、検査頻度は高くなります」

内視鏡検査を1回受けるだけで、大腸がんのリスクが減らせるのはとても心強いものです。

いざという時のために保険で備える

「病気が見つかったら嫌だ」と思う人が多いとありましたが、では、内視鏡検査をして、大腸ポリープや大腸がんが発見されたらどうすればよいのでしょう?

「内視鏡で大腸ポリープや大腸がんを早期発見できた場合、その場で内視鏡切除可能なものに関しては、そのときに切除します。ですので、日帰り手術もできるのです。大腸がんの場合は、早期がんで見つかればほぼ完治できます」

がんの手術というと大がかりなものを想像しがちですが、検査をしてポリープやがんがあればその場で切除可能なものもあるということですから、意外にも簡単な手術で済むこともあるようです。検査も手術も日帰りでできるのは、働き盛りの忙しい年代にとっては非常に助かります。一方で、検査費用や手術費用ももちろんかかります。

「一般的な医療機関において受診する場合は3割負担の保険診療で受けられますが、ポリープ切除が必要な場合は切除費用として手術費が必要になります。内視鏡でポリープやがんが見つかり、切除した場合、がん保険や医療保険に加入していれば手術費用が負担される場合があります」

検査の途中から急に手術に変わっても、医療保険が出るとなれば精神的にも金銭的にも安心です。
症状が出ていないからといって、大腸ポリープや大腸がんがないとはいえないもの。いざという時の不安を解消できるよう、元気なうちから保険で備えておくことが大事です。

正面を向いて立つ谷口先生

<谷口将太郎先生プロフィール>
新宿内視鏡クリニック院長。日本消化器内視鏡学会所属。日本大学医学部卒業後、福岡徳洲会病院の救急総合診療部(ER)に勤務。その後、大隅鹿屋病院に勤務し、内視鏡について研鑽を積む。2016年、現在のクリニックを開業。

2018年6月現在の情報を元に作成