がんの闘病生活と切っても切り離せないのが、治療中や手術後の外見の変化。医師から説明を受けていたとしても、いざ「髪や眉毛が抜ける」「肌がくすむ」などの変化を目の当たりにすると、大きな悩みの種になってしまいます。とくに女性の場合は、より深い苦悩を抱えることも。

その一方で「がん患者のためのメイク方法」「自然なウィッグの装着法」など、“見た目のケア”(アピアランスケア)の情報はあまり広く知られていません。そこで今回は、がんによる外見変化の悩みの解消法をご紹介します。

髪から肌、ネイルまで部位別の悩み解消法

肉体的、精神的にも大きな負担がかかるがんの治療中でも、おしゃれを楽しむことは生活の張り合いにもつながります。

「治療中に髪や眉毛、まつ毛が抜けて、くすんでいく肌を見ると落ち込みますよね。でも、ウィッグを被って髪型を整えたり、ビシッとメイクをしてお気に入りの服でおしゃれをしたりすると、街を歩くときも晴れやかな気持ちになるんですよ」

そう話すのは行政書士の瀬戸川加代さん。瀬戸川さんは、自身のがんとの闘病経験を活かし、YouTube上で「かよプロジェクト」と題してがん患者向けの動画コンテンツを配信しています。

笑顔で話す行政書士の瀬戸川加代さん

「かよプロジェクト」では、ウィッグの装着方法やつけまつげの付け方など、女性のがん患者が抱える外見の悩みを解決する方法をわかりやすく紹介しています。おしゃれとがん患者の架け橋になっている瀬戸川さんに、外見変化の悩み解消法について詳しく聞きました。

頭髪の悩み

抗がん剤の副作用によって抜け落ちることがある頭髪。その解決策としては「ウィッグ」を使う人が多くいます。ひと口に“ウィッグ”といってもさまざまな種類があるなか、瀬戸川さんは人工毛で1万円前後のファッションウィッグが最もおすすめだと言います。

「毎日ウィッグを被ったとすると、2カ月ほどで髪の毛が絡まりやすくなって、取り替えの時期になります。装着時には、付属のネットを被ってからウィッグを装着すると、汗のベタつきを抑えられますよ」

また、夏場の暑さで頭皮が蒸れたときは爽快感があるデオドラント剤をこまめに塗ると、不快感が軽減されるそうです。

ウィッグには「医療用」と「ファッション用」があり、「医療用ウィッグ」は蒸れにくい、頭皮への負担が少ないなどの考慮がされたつくりになっています。実際の利用にあたっては専門店へ相談したり、メーカーなどが開催する試着会へ参加してみたりすることをおすすめします。

眉毛の悩み

頭髪と同じように、抗がん剤治療中は眉毛やまつ毛も抜けてしまうケースがあります。対処法としてアイブロウで眉を描いても、汗で落ちてしまう可能性があり少々不安。そこで瀬戸川さんが使用しているのは「眉ティント」です。

「眉ティントとは肌に直接眉の形を描き、乾いたあとに剥がすと肌に眉が描かれるメイク用品です。最大のメリットは汗で消えない点。描いた眉毛が数日間維持できるものもあり、とても重宝しています。ドラッグストアでも気軽に購入できて便利なので『かよプロジェクト』の動画でも、使用方法を紹介しました」

眉ティントは近年多くの女性に支持されるメイク用品。「病気だから普通の化粧品は使えない、と躊躇せずに使ってほしい」と、瀬戸川さんは話します。

肌の悩み

がん治療中は肌にも「くすみ」や「荒れ」などの不調が表れます。

「肌のくすみには、一般的なファンデーションでは隠しきれない、やけど痕や抗がん剤治療中の肌のくすみをカバーできるコンシーラーがおすすめです。仕上がりがキレイなので、くすみを消すために使用します」

肌のくすみをカバーするためにコンシーラーを使用した前後の写真

むくみの悩み

左脇下のリンパ節切除手術を受けた瀬戸川さんは「リンパ浮腫」を発症しています。そのため、リンパ液の流れが滞り、むくみを感じるように。

「腕がだるくて重い症状を軽くするために、病院で購入したサポーターを使用しています。7,000~8,000円ほどですが、医療器具なので公的医療保険制度の中で補助金が出ることがあります。また、リンパを流す『リンパドレナージュ(リンパマッサージ)』も行なっています」

むくみ防止用のリンパを流すサポーターの写真

爪の悩み

抗がん剤を点滴で投与することで、爪には血液の流れに沿って「横縞の線」が波打つようになることもあるそうです。手元を見るたびに爪が気になってしまう人も多いはず。

「爪の線は、濃い色のマニキュアでカバーしました。ただし『ジェルネイル』は使用しないように医師から注意を受けました。緊急時にすぐ剥がせないジェルネイルはがん患者には向いていません」

がん患者のおしゃれの選択肢を広げたい

動画を通して、がん患者に「おしゃれの楽しさ」を提案する瀬戸川さん。彼女が動画を作るようになったきっかけについても聞きました。

「がんになると、治療内容や金銭面、仕事など、さまざまな不安に襲われます。実際に治療が始まると、外見の変化が予想以上に大きいため、身だしなみについての悩みもどんどん押し寄せてきます。悩みを抱えるうちに、外出する元気がなくなってしまう女性も少なくないんです」

瀬戸川さんは5年前に乳がんを患い、抗がん剤治療をする際には医師から「数週間後に髪が抜けるのでウィッグを用意して」という説明を聞いていたといいます。それでも、髪がごっそり抜けたときの衝撃は忘れられない、と振り返ります。

治療中に初めて購入したのは「医療用ウィッグウィッグ」と呼ばれる、人毛を使用したもので価格は13万円前後。しかし、数年後にがんが再発したときに当時のウィッグを出してみると、髪の毛がはねたり、つぶれたりしており、使用できる状態ではなかったそうです。

「再発時には高額なウィッグは買えなかったので、試しに健常者向けのファッションウィッグを購入してみると、とても自然な仕上がりでした。そのとき『医療用にこだわる必要はない』と気づいたんです」

ウィッグの使用について笑顔で話す瀬戸川加代さん

ファッションウィッグの使用によって選択肢が広がり、おしゃれへの意欲が湧いた瀬戸川さん。

「この体験から『外見がキレイになると、ポジティブに過ごせる』ことを、私と同じようにがんと闘う女性や、患者を支える人たちに伝えたいと思ったことが、動画プロジェクトを立ち上げるきっかけでした」

その後、瀬戸川さんが中心となり、彼女が通う美容院や周囲の協力のもと動画を撮影し動画コンテンツ「かよプロジェクト」を2016年に公開。瀬戸川さんの想いが形になった瞬間でした。

動画の反響も大きく「ブログやSNSをはじめ、対面でお会いした人に『私もやってみようと思った』『発信する勇気がすごい』といった感想をいただけるのは、とても嬉しいです」と、瀬戸川さん。

瀬戸川さんは自身の動画について「がん患者の方に治療以外に目を向けるきっかけになってほしい」と、語ります。

「がん患者になってから、生活と命が直結したことで『時間の貴重さ』を実感するようになりました。落ち込んでいる時間があるなら、楽しいことをして過ごしたいと考え、いろいろなことに挑戦しています。今年から趣味で陶芸を始めたんですよ。陶芸に集中している間は、治療のことも忘れられます」

そう笑顔で話す瀬戸川さんに、多くの人が勇気づけられているのです。

がん保険が支えた闘病生活

がんと付き合いながら日々を楽しむ瀬戸川さんですが、乳がんが判明したときには、経済面と仕事、子育てなどさまざまな不安が一挙に押し寄せてきたそうです。そんな暗闇のなかでも「がん保険が心の支え」になったと話します。

「初発のがんのときの給付金はとてもありがたかったです。私は自営業なので、治療中に働けなくても従業員の給料や外注費を払わなければならないうえ、家賃や子どもの学費などの生活費もかかります。それらの支出があるなかで給付金が生活費の足しになったので、本当に助かりましたね」

とくに瀬戸川さんのように自営業の人が休職をすると、収入がダイレクトに減ってしまうリスクがあります。

また、治療で生じた外見変化をケアするにも費用がかかります。例えば治療に伴う頭髪の脱毛について、症例によってはファッションウィッグが合わずに医療用ウィッグを必要とすることもあるでしょう。そんなとき、ウィッグの購入費に充てられる外見ケア給付金が用意されているがん保険外見ケア給付金が用意されているがん保険を選ぶのも選択肢の一つでしょう。

経済面の安心がなければ、おしゃれをする余裕がなくなるのはもちろん、治療にも専念できない……。いざというときに、自分の「生き方」の選択肢を広げるためにも、がん保険がん保険について真剣に考える機会は必要なのかもしれません。

<お話を伺った人>
瀬戸川加代
行政書士瀬戸川法務事務所代表。40歳のときに乳がんが見つかり、働きながら治療をつづける。2016年から「がんでもキレイに」をコンセプトに、ウィッグの被り方やメイク方法など、外見の悩み解消法などの動画コンテンツを配信。さまざまなメディアから注目を集める。

2018年9月現在の情報を元に作成

※がんを経験された個人の方のお話をもとに構成しており、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません。
※ここで紹介する解消法は、個人の治療の状況等により体調等に影響を及ぼす可能性もあるため、事前に主治医とご相談ください。