がんになっても私、何で仕事を続けたいんだろう?もちろん、一番は乳がんの通院にお金がかかるから。
でもそれ以上に、病気になっても自分がちゃんとここにいますって言いたいからかもしれない。
できることからちょっとずつ、がんばりすぎないように働いています。
がん発覚で忙しい日々が一転。心の整理がつかないまま手術へ
海からの風が吹く街、福岡。この住みやすい街を拠点に、私は旅行やグルメの雑誌を担当するライターとして、九州各地から四国まで駆けまわる日々を送っていました。
乳がんがわかったのは、年末の慌ただしい時期。12月だというのに、まだ真っ赤な紅葉の中を茫然として帰ったのを覚えています。
乳房温存するかどうか、じっくり検討する間もなく、即手術することになりました。知り合いのカメラマンさんに記念に胸を撮影してもらって、入院しました。ギリギリまで笑っていようと思ったのは、親や主人に気をつかわせたくなかったから。私が泣くと悲しむかな、と思ったのです。でも結局麻酔のときには、これでなくなるんだと思うと涙が出てしまいました。
治療をしながらでも、働き方を変えることで仕事を続けられた
手術後2カ月くらいして始まった抗がん剤治療。よくドラマに出てくるような症状を想像し、覚悟して臨みましたが、全クール無事に終了しました。日ごろの仕事で身についた打たれ強さが味方してくれたのかもしれません。
同業の友人は「家でできるこんな仕事があるんだけど、やってみない?」と優先的に仕事をまわしてくれて、普通に接してくれました。以前のようにあちこちに出張して、取材に行くような仕事はできませんでしたが、自宅で書く仕事に専念すればこなせたので、意外とそのままきっちり継続。
病気でも仕事を続けられるんだな、ありがたいなと思いました。髪はもちろん抜けて、ウィッグを使っていましたが、何個も取り換えたりして、前向きに楽しみに変えている部分もありました。
抗がん剤の後も、がん治療にはお金がかかる。あらかじめ目的別に貯金を
がん保険には入っていませんでした。主人は入ったのですが、私はがんの家系じゃないし、世帯主でもないし、まだ若いし、いいかな、と。抗がん剤治療後の定期健診の結果は「異常なし」でほっとしたのもつかの間、支払い額の多さにめまいがしました。この先も、がんにはお金がかかりますね。
生活費の面では主人にお世話になっていますが、自分にかかる部分は自分で面倒みたいと思っています。治療費だけではなく、洋服を買ったり、旅行に行ったり、楽しく生きたいって思うから、あらかじめ目的別に貯金しています。仕事は自分のアイデンティティでもあるから、体が動く限りはどんなかたちになっても辞めないつもりです。
がんを経験して、仕事にも遊びにも全力で向き合えるようになった
体力や気力が落ちていくのがイヤで、「その分体を鍛えてやる!」と富士登山も、福岡シティマラソンも家族と挑戦しました。暗いうちから大濠公園で、木々たちの季節の変化を見ながら走ったりもしています。本当は体を動かすことは大嫌いなんです。でもそれをあえてやってみたら、確かに風邪を引きにくくなったりもっと欲が出てきたり、とうれしい変化がありました。
私は、もともと決してポジティブな性格ではありません。でも、病気になったことで人生を諦めたりしたら悔しい。だからアグレッシブにいきたいんです。
こそこそせず、堂々としていていいと思う。がんになってよかった、とまでは思わないけれど、病気のおかげでいったん立ち止まることができました。「自分が本当にしたいことって、何だったかな」仕事の面でも遊びの面でも、考えるきっかけをもらった気がしています。